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INTERVIEW 特別インタビュー

Special Interview


特別インタビュー
<セラピスト編>
02

2017/09/27 掲載

野田様担当セラピスト
理学療法士 清塚晋インタビュー

患者さんにとって安全で効果が期待できそうな器具や考え方は、業界内で前例が無くても積極的に取り入れるようにしています。


今日は野田さんのリハビリについて、KIyoリハビリPROSと訪問リハビリで野田さんを担当している理学療法士の清塚晋さんにお話を聞かせていただきます。清塚PT今日はよろしくお願いします。

 

お願いします。

 

野田さんとどのくらいの期間リハビリをしているのですか?

 

僕が担当になってからちょうど3年目になります。あっという間の時間でした。

 

野田さんと出会った時の会話を覚えていますか?

 

覚えていますよ、「しっかり歩けるようになりたい!あなたに任せるから頼みますよ」という内容でした。

 

リハビリに対して強い気持ちを感じるお言葉ですね、その時どう思いましたか?

 

「まかしてください!」と思いましたね。歩けるようにしたいという気持ちでいっぱいでした。結果を出せる自信がありました。

 

リハビリを開始してからの一年はどのような事に取り組みましたか?

 

最初は寝返り、立ち上がりといった基本的な動きが難しい状態でしたのでまずはこういった基本的な体の使い方を練習しました。この時期は身体の柔軟性と安定性の力を引き出す事が目標でした。

 

(自宅での立位トレーニング)

 

 

今よりも身体が動かしづらい時期ですよね、リハビリの時はどのような工夫をされましたか?

 

野田さんの場合ベッドの上で足を動かす練習では上手く力が入らなかったんです。そこで寝返り・立ち座りの動作練習を積極的に行う中で身体の動きのレベルを上げていく作戦に切り替えました。歩行練習も取り入れていました、その当時は僕が介助する部分も多く「野田さんが自分で歩いている」というよりは「僕に歩かされている」という感じでした。

 

最初は歩行練習するだけでも大変だったのですね。その後歩行練習が十分行えるようになるまでに、山場となった場面はありますか?

 

リハビリというのは日々小さな貯金を積み重ね一つの結果を出し、その結果が次の結果に結びついていきます。長期的な目線で見なければ、前進しているのか後退しているのか分からなくなる時期があります。野田さんのリハビリにもそのような時期がありました、そんな時は「この練習が次に繋がる!」という事を丁寧に説明し、モティベーションを保つ事に注力しました。そういった場面が2〜3回あり、乗り越えて行く過程で少しずつ歩く力もついてきました。

 

小さなステップアップを繰り返している時は患者さん自身も先が見えにくい時期ですよね、そんな時こそ「正しい方向へ向かっている」というセラピストからの言葉は大切ですね。

 

そうですね。回復過程というのは患者さんにとっては大変な思いをしながら未知の世界を歩いているに等しいと思います。その時々の悩みや思いは話し合い、疑問を解消する為に丁寧な説明を心がけました。

 

野田さんリハビリをする上で新たに採用したアイディアはありますか?

 

患者さんにとって安全で効果が期待できそうな器具や考え方は、業界内で前例が無くても積極的に取り入れるようにしています。移動式ハーネスを利用したり、旦那様に依頼してDIYで作成していただいた起立台を使用するなど「使える物はなんでも使う」をモットーにリハビリをしています。リハビリに必要であればオープンカーだって用意しますよ(笑)

 

(ご主人がDIYで作成された起立台)

 

 

(車への乗車も練習しました)

 

 

リハビリでは長下肢装具を利用していたそうですが、どういった理由で使われていたのですか?

 

野田さんの場合、下肢の麻痺が重度で立った時踏ん張りが効きませんでした。ただ立つ事による身体に対しての刺激は脳卒中麻痺の治療で重要です。踏ん張りが効かない場合でも、立つ練習や歩く練習を行うため長下肢装具を利用しました。

 

そうなんですね、では野田さんの場合長下肢装具をつけてリハビリをする際に気をつけた事はありますか?

 

過剰な負荷になると身体のコントロールが行えず良い効果が得られない場合があります。適切な負荷になるように姿勢や運動の難易度を調節する事が不可欠です。私はハーネスを利用したり、自分の身体を使ったりして野田さんが恐怖感や不安感を感じないレベルに調節してリハビリを進めました。

 

リハビリの難易度の設定は慎重に調節を行っていたのですね。現在はどのような事を中心にリハビリを行っていますか?

 

トレーニングに用いられる動作も立位や歩行などが中心となってきて応用的な動きも入り難易度も高くなってきています。それらのリハビリを効果的に行う為には体力の持久力や集中力も必要とされますので、集中力を保ちやすくするなどリハビリの効果が高くなるように工夫しています。あとトレーニングの回数と頻度にも気をつけています。野田さんの場合「集中力を保てるレベルでのトレーニング」の頻度をどのくらい多く確保できるかが大切なポイントになってきていますね。

 

野田さんの期待に応えられていますか?

 

自分では分かりませんが、毎回ベストを尽くす姿勢でリハビリを行っています。

 

希望に繋がるリハビリをする為にどのような事を心がけていますか?

 

当事者意識を持つ事が大切だと思います。相手の立場に立って考え、利用者の方の希望に繋がるような言葉や態度を選びます。気持ちも明るくなっていただくよう心がけています。我々セラピストはリハビリの内容はもちろんの事、その他にも言葉や表情といった全身から相手に発するメッセージに意識を向ける事も大切だと思います。

 

 

 

相手の立場に立って考える、これはコミュニケーションの基本でありながら実践が難しい、人として相手にどう向き合うかが問われている部分ですね。答えは有りませんが色んな実践の形が有ると思います。では、理学療法士としての信条はありますか?

 

リハビリに関しては基本を大切に出来るだけシンプルに考えるようにしています。年齢や疾患や環境など利用者さんを取り巻く状況は様々なので出来るだけ想像力を働かせて気持ちに寄り添う事を心がけています。


野田さんの家族がリハビリに関わる場面は有りましたか?

 

毎回家族の方がリハビリに力を貸してくれます。家族のサポートが野田さんを支える大きな力になっていると感じます。ご主人はいつも工夫をこらしたオリジナルのリハビリ機器を作成してくれます。世界に一つしか無い野田さんの為のリハビリ機器で、細部まで丁寧な作りになっていて野田さんに良くなってほしいという気持ちを感じます。家族でないと思いつかない視点で作られていますし、「この発想があったか!」と思わせるオリジナル性も高いですね、僕は旦那様の作るリハビリ機器が大好きです。娘のマキさんはリハビリチームに家族の目線での課題や提案を挙げて下さり、リハビリの工程を考える上で非常に参考になっています。

 

(ご主人が作成されたテーブル)

 

 

(ご主人が作成された起立台)

 

 

野田さんは今後どのようなリハビリを行えば良いのでしょうか?

 

今後は、練習の頻度や強度を見直す必要が有ると思います。デイサービスや訪問リハビリでのリハビリだけでは無く自宅内での自主トレーニングの頻度を増やしていく必要があります。一度繋がった神経回路を維持し、更に強化していく為にも反復練習は欠かせません。また今までは難しかった歩行中の身体の使い方や反応などを引き出していくチャレンジも必要でしょう。これからもTru&errorを繰り返しながら一緒に前進していきます!

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