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2021.05.17 [kiyoリハビリPROSの日常]
一家団欒の鉄鍋

どうしても捨てられない物はあるだろうか?

なぜか長年手元にある物、どうしても捨てられない物はあるだろうか?一緒に過ごした大切な物には時間と思い出が重なり合い、気がつけば自分の大切な一部となる。そして、そこに「物語」が刻まれる。

 

ここに一つの鍋がある、これは当施設を利用されている木下様が長年大切に使ってこられたものだ。持ってみると金属の塊でズシリと重たい、重厚感があり最近の鍋とはやや雰囲気が異なる。この鍋と木下様との付き合いは60年前に遡る。

 

 

 

 

それは昭和36年、東京オリンピックのちょうど3年前である。日本が戦後の復興を遂げて高度経済成長の波に乗っていた時代だ。木下様にとっては結婚生活が始まった年でもある。新居は決まったがまだ家具も何も揃っていない、それでも将来への夢があれば楽しい毎日が送れた。二人の物語が始まった時いつも食卓にあったのがこの鍋だった。木下様が実家から持ってきたのだそうだ。

  

 

1964年の東京オリンピック

 

 

木下様はおっしゃる「紀寺の住宅公団に住んでいてね、家賃は5500円で2DKだったね。窓から若草山がよく見えたよ。よくこの鍋を二人でつっついてた」この鍋をつつきながら、新婚の二人はその日あったことを話したりしていたのだろう。

 

 

その後二人の娘に恵まれ、木下家は四人家族になった。「みんなすき焼きが好きでね、よくこの鍋ですき焼きを食べたなあ。いろんな話をして家族団欒が楽しかったよ。冬には若草山の山焼きをみんなで見ながら食事をしたね、昨日のことのように覚えているよ。」

 

 

 

現在に至るまで4回の引っ越しをされたという。「引っ越しで整理した時も、この鍋だけは絶対捨てられなかった。私には大切な物だから」木下様にとってこの鍋は家族の歴史をずっと側で見てきた、一家団欒の象徴なのだと思う。今でもこの鍋を使っているのか問うと、「もちろん使っているよ、これからもずっと使っていくつもり。」とおっしゃられていた。

 

木下家のすき焼きは健在である。

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